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「T3」について

今回のコンサートのトピックは、新しく進化した「T3」のお披露目にありました。昨年発表した「T2」は、その性能の高さで評判を頂きましたが、一般家庭に入るのには大きすぎるため、性能を落とさず、12畳ぐらいの部屋を目標に開発されたのが今回の「T3」です。石田さんの那須の試聴室をターゲットに寸法が決められました。SD05の出現で、従来のNFBから逃れられインピーダンスの一定した、安定したSP造りを目指してまったく新しいコンセプトのもとに開発されたのが「T3」です。

近年のSPは、特性を重視しすぎて、実際にアンプで稼働するのが困難なSPが出現してきました。SPからの起電力に負けないような、インピーダンスの低い駆動力をもったアンプにすると、必然的に巨大なアンプになってきます。電源部への負担も大きくなって大変効率の悪いアンプが主流になってきました。帯域を細かく分けて4ウェイ5ウェイのスピーカーでは、能率が悪くなり、一部の大型SPでは、有る特定の帯域になると極端にインピーダンスが低下して、アンプの供給が間に合わなくなるような設計のモノもあったからです。
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NFBのないSD05では、部屋の影響から発生する音圧の上昇によるSPの起電力には、余り影響されないので、今までとは逆に再生する音域全体に安定したインピーダンスを持つSPが設計できるようになります。もっとも昔のSPは、インピーダンスも高く安定していました。ただ、当時のアンプでは、充分な再生帯域を低歪みで再現するのが難しかったのです。SD05のオーナーさんが、昔からのSP、JBLのパラゴン、ハーツフィールド、タンノイのGRF、ウェストミンスター等を愛用されている理由も良く理解できます。従来とは違った広帯域の再生が可能になったのです。音が抑制されない楽々とした音が楽しめるからです。

現代の広帯域、低歪みSPで、SD05の性能を発揮できるように設計されたのが、今回の「T3」です。会場で、設計者の大山さんから、「T3」の開発コンセプトと設計秘話が語られました。寡黙な大山さんが、熱く語ったお話しを再現してみましょう。

「このSPは、石田さんからの要請で、那須の試聴室のSONYのSS-1EDの代わりになる標準SPに開発されました。石田さんから出された条件は、大きさは一般的なリスニングルーム6畳から12畳程度に収まるような大きさと重さです。今回の「T3」は高さ93センチで、重さも36キロに抑えることが出来ました。「T2」に比べると高さで30センチ、重さで半分以下にすることが出来ました。これなら一人での移動できる範囲です。

再生周波数は、30Hzから40KHzまで。オルガンでも充分に再現する音域です。実際には、バスレフポートの設計を、より低い帯域に持っていっているので、30Hz以下の音も再現しています。高域は、無用に帯域を延ばすことを止めて、20KHzが充分に再現可能な40KHzにしました。それ以上の高域は、人間耳に聞こえないばかりか、混変調歪みを発生させるおそれがあるからです。予断ですが、100KHzまで再現できるツイーターを開発したメーカーがお困りになたのは、実際に低歪みで20KHz以上ならしても、鳴っているか、鳴っていないか解らないことです。その為、可聴帯域から聞こえるようにして有るというお話です。誰にも聞こえない(誰にも見えない)のでは、本人だけが納得している「裸の王様」になってしまうからです。」


石田さんは、不必要に聞こえない帯域を再現するのは、かえって可聴帯域の音に悪影響を与えるとおっしゃっています。SD05は、低域は直流から再生できますが、高域は50KHZまでとして現実には、CDの規格の20〜20000Hzを完全に再現できています。それを再現するSPが求められているわけです。大山さんは続けます。
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「このSPのクロスオーバーは、150Hzと3000Hzにあります。通常の3ウェイのSPですと、300Hz付近にクロスを持ってくるのですが、それだと、人の声の一番大事な領域が、二つのSPから出てくる不自然さが気になります。しかし、150Hzにクロスを持ってくると、ネットワークのコイルやコンデンサーも制約が大きくなります。今回は、ウーハーの高域を切るネットワークに新開発の高価なコイルを奮発して、逆の中音域の低域を切るコンデンサーの変わりに、中音用のエンクロージャーの容積を計算して丁度クロスオーバーのカーブに合わせて容量を設定して、自然に低域が落ちるように設計しました。因みにこの中音と高音用ユニットは、スキャンスピーク社の最高級ユニットでネオジュームを使用しています。中音ユニットの口径は音質に大変影響があります。ウーハーと口径が違い過ぎると、音色の変化が聞こえます。逆に高音ユニットとも口径が違いすぎると音の繋がりに影響が出ます。それを解決するために、いわゆる仮想同軸方式にしました。すなわち低音に対しては、二つのユニットで面積を倍に増やし、高音ユニットは小口径で音色の変化を少なくし、同時に中音ユニットの真ん中に高音を置くことに依り同軸SPの様に、音の定位が安定します。ほとんどの音は、中高音ユニットから出ていますから、その音色の統合性が大事ですね。」

中音ユニット用の空間は、エンクロージャーを横見ると二つのSPが丁度昔の黒電話の受話器と送話器のような形で繋がってくり抜かれています。います。手で持つところの窪みに、高音ユニットがはめ込まれているからです。上の写真からその辺の工作の凄さが解りますね。大山さんは、若い頃、本田のレース用の車を作っている会社で、鋳型に使う木工用の工作をNC旋盤を使っての高度な作業をされておられました。その時の貴重な経験が、この様な高度の木工作業を可能にしています。

「エンクロージャーは、SPの反対側のエネルギーを封じ込める大変な役割をになっています。皆様がいまお聴きになられているのと同じ音圧がSPの反対側から出ています。その為、エンクロージャーは常に振動しています。その振動からも音は盛大に出ていますから、SPを聴くと言うことはエンクロージャーの響きを聴くことです。でもSPの存在は強調されこそすれ、音はSPからは離れた音場を構成せず、SP自身から音が出ている音になります。通常言われるSPの個性とは、エンクロージャーの響きに他なりません。

SP自身が鳴るのではなく、音を離して空間に再現するためにはこの余分な響きを抑える工夫が必要です。中高音ユニットは、厚いバッフルの中に埋め込み、大きなエネルギーを出す、低音ユニット用のエンクロージャーは、固有の響きを出さないために剛性を高めて、合計960プライの積層構造で組み上げました。しかし、どんなに剛性を高めても寸法から発生する共振周波数の固有の響きからは逃れることは出来ません。それを最小限に組み止めるために円形構造のバッフルとしてエネルギーを分散させ、尚かつ、板厚を連続的に変化させることにより特有の周波数での共振を避けています。結果として、音離れに優れ、空間再現性が向上しました。また、表面の仕上げ加工も音に大きな影響があります。表層のおとのスピードを上げるために音の良い板による仕上げ加工を重視しています。」


「T2」は、その低域の壮大さに圧倒されましたが、今回の「T3」は、高域のすばらしさに感動します。通常のお部屋の至近距離で聴いていても、SPの存在が消え、広大な音場が出現します。スピードの速さは、他を圧しているのが今回のコンサートで確認が出来ました。那須の石田さんお試聴室、大宮のPSD社の試聴室でいつでもその音をお聴きになれます。SD05の切り開いた新しい時代にマッチする最初のSPシステムですね。

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大宮のPSD社の試聴室です。
by SD05club | 2007-07-01 14:15 | Sound Cafe
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