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無帰還へのこだわりをデジタルで達成

サウンドデザインでは昨年から進めておりましたデジタルアンプの設計が完了し、9月より受注を開始いたしました。モデル名はSD05です。ここではSD05の概要と特徴、無帰還にこだわった背景を簡単に解説いたします。
サウンドデザインのデジタルアンプは、ソニー(株)が開発したs-masterプロセッサーをコアにした負帰還のないアンプです。技術的には増幅器の構成をとっていないので、スピーカーを駆動できるD/Aコンバーターです。
一般的にスピーカーを駆動するものをパワーアンプと呼んでいることから、ここではデジタルアンプと呼ぶことにします。

技術のポイント

ここ数年のうちに、各社からデジタルアンプが発表されていますが、大きく分けて「負帰還を持つ増幅器タイプ」と「無帰還のD/Aコンバータータイプ」があります。
いずれのタイプも出力段の動作はスイッチング方式で、従来からDクラスなどと呼ばれていました。スイッチングアンプは供給される電源の質によって音質が左右されやすく、スイッチングには数ナノ秒の時間が掛かるため、この部分がデーターどおり再現できず、ひずみとしてあらわれます。

製品の設計にあたっては、ここから先の考え方に 大きな違いがでています。スイッチングアンプの良さを採りながら電源への依存度やスイッチングのひずみを改善するために総合して負帰還を用いたのが増幅器タイプです。
一方、スイッチングのひずみは残るものの、負帰還還に伴うさまざまな問題を解消するため、負帰還を使わずに実用に十分な特性を得ようとしたものがD/Aコンバータータイプです。
負帰還に伴う大きな問題は、アンプが駆動する相手がスピーカーだということにあります。スピーカーはLCRの要素があり、また電気機械系なので部屋の音圧により起電力が発生し、その成分が負帰還回路を通して入力側に戻りアンプに影響を与えてしまうことです。
これらのことから、スピーカーの置かれる部屋の特性や設置の仕方などを含め、大きなループが形成され結果的にそれぞれが干渉しあうことになります。

当社が採用したs-masterプロッセッサーによるアンプは負帰還をもたず、生成されたPWMデーターによりそのまま電力素子を駆動し、簡単なローパスフィルターによってアナログ信号を得ています。
また、出力段の動作は最適値を確保するためにタイミング調整は一台ごとにおこないます。
構造は十分な安定度を持つ大型の電源を左右対称に配置。余分な配線材をなくした一枚基板で構成し、音質だけでなく信頼性の向上にも努めています。また、キャビネットはアルミの削りだしで密閉構造です。

無帰還へのこだわり

無帰還へのこだわりは今から40年以上前に秋葉原の電気街で部品を買い集めアンプを自作してオーディオを楽しんでいた頃まで遡ります。
特性を良くしようと負帰還を多くかけると高域まで伸びた良い音になるのですが、音楽に躍動感がなくなるような気がしていました。また、負帰還が少ないと独特の音色がして、どの程度負帰還をかけるかという点について思考錯誤していました。
その後、仕事としてテープレコーダーの開発や設計に携わるようになり、原音再生を目指した時期もありましたが。
そして、録音再生を数多く経験するうちに、録音の現場などで音色は変わっても「現場の雰囲気に近く聴こえる方が良いのでは?」とも考えるようになりました。
 そして、決定的だったのが、レコードの製作をしているレコーディングエンジニアと議論をしていたときです。エンジニアから最後に出た言葉が「レコードに原音はない。私が原音だ」だったのです。この頃からレコードは作品だと思うようになり、現在に至っています。
原音再生を目指すのは大切なことですが、サウンドデザインでは、原音再生はオーディオ音楽を楽しむための手法のひとつであると考えています。
アンプのデジタル化はデジタル音源が多くなったこともありますが、無帰還アンプを達成するための手段の一つであると思っています。

生活空間の範囲でのオーディオ

デジタルアンプSD05はスピーカーや部屋の影響を受けにくいため、部屋の構造やスピーカーの置き方に対して寛容です。
また、サイズもコンパクトで消費電力も普通の音量では20ワット以下ですからリスナーの生活空間を大切にしながらレコード音楽を楽しんでいただけます。
サウンドデザインはより多くの音楽愛好家の方々に、オーディオ音楽を楽しんでいただきたいと願っています。

(日本オーディオ協会機関誌・JASジャーナル誌より転載)
by SD05club | 2006-08-08 18:11 | 石田さんから
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